2011年2月3日木曜日

スタインウェイなのにヤマハの音?

今朝も4時前に起きて、朝一でいつものスタジジオへ。
何日か前に外部の調律師が入ったようです。音を出した瞬間に分かりました。
スタインウェイの音色じゃありませんでしたから・・正確に言えば自分が作ったスタインウェイの音色じゃないって事なんですが。

このスタジオは、専属調律師として長年メンテナンスさせて頂いてます。その甲斐あってか都内でも音の良いスタインウェイがあるスタジオとして通っています。
それが全然スタインウェイらしくない音になっていました。ハッキリ言って悪い意味でヤマハっぽい音です。あれなら状態の良いヤマハの方が響きは良いくらいです。ピアニストからクレームは出ないんでしょうか?
まあ、ピアニストがわざわざ連れて来た調律師ですから、モンクは無いんでしょうけど・・

和音や精度の問題とか色々あるんですが、話が長くなってしまうのでそこんところはスルーします。
なぜスタインウェイらしくないのかと言うと、倍音を消してしまってるからなんですね。
音域によって違いはありますが、ピアノには一つの音に対して3本の弦が張ってあります。この3本の音程を同じに合わせないと一つの音にならない訳ですが、同じと言っても機械で測れない位の微妙なズレ(ズレと言うとちょっと語弊がありますが、解りやすくズレとします)を作る事によって音色を作る事が出来ます。音程にも幅があって、合ってる音程の幅の中で、どのポイントに合わせるかと言う事です。ただ合わせるだけで精一杯の調律師が多いのですが、ある程度のレベルの調律師になれば、合わせるポイントを意識的に変える事が出来ます。
ピアノは1台1台すべてコンディションが違いますから、それによって合わせるポイントも変える必要があります。基本的に自分の好みの響きが出るポイントで合わせるのですが、ピアニストの好みで変える事もあります。

特に高音部が分かりやすいのですが、弾いた瞬間「プン」って音が止まってしまう感じのピアノを弾いた経験のある方、多いと思います。全然伸びのない音ですね。
あれってピアノのせいじゃないんですよ。調律師が作った音なんです。
3本の弦を逆位相で合わせているんですよね。ちょっと専門的な話になりますのでここも軽くスルーしときます。
要はこの合わせ方をすると、伸びや響きが消えてしまうんです。
叩いた瞬間だけパンと音が出ますから、勘違いしてる人が多いんですよね。
今日は、正にこの状態だった訳です。

この音、伸びがないだけじゃありません。
一番大事な表現力が無くなってしまうんです。倍音が出ないので音色の変化が乏しくなってしまうんですね。つまりタッチを変えても音色が変化しないって事です。
音が良いとか悪いとかの次元ではありませんよね。
それにどうしても響きが内側に向いてしまいますし、抜けも悪くなります。
普段からこの音で弾いてる人は感じないと思いますが、響きのある調律を知っているピアニストには不満が出るようです。弾いててつまらない、欲求不満になるようなんですね。

スタインウェイとかベーゼンドルファーとか、向こうの楽器にはハッキリとした個性があります。
その個性を良く理解して、それに合った音色を作る事が大切です。
せっかくのスタインウェイなのに違うメーカーのような音になってしまう。それはイヤですよね~。